夢を信じて……

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夢を信じて……

 豪奢なベッドの上に横たわる老人。  今にも息が途絶えそうな彼を、周囲の者は悲しみの表情で見下ろしていた。  贖えぬ運命の時が近づいていたのだ。 「ジュニア……ジュニアはいるか……」  かすれた声で息子を呼ぶ。 「父上、私はここにおります」  細く頼りないその手をジュニアと呼ばれた青年はしっかりと握った。 「良いか……諦めてはならんぞ。大切なのは心折らぬ事だ」 「はい、父上」 「諦めず……日々努力せよ。毎日……コツコツと……積み重ねていくのだ」 「はい……。はい、父上」  血色の双眸から溢れだす涙。  周囲からも咽び泣く声が立ち始めた。 「自らの思い描いた未来を……夢を……信じて生きていくのだ……」 「はい。必ずや、必ずやそのお言葉を守って見せます父上」  息子の眼から流れ落ちる涙。その向こうに決意の光を見た父は、満足そうに頷いた。 「後は……任せた……ぞ」  手から力が抜け、するりと青年の手を滑り落ちる。  音もなくベッドの上に落ちた手が、命の火が消えた事を告げていた。 「父上ぇぇぇ!!」  青年の叫び声が部屋にこだました。  そして周囲の者達も堰を切ったように声をあげて泣き始める。  部屋は涙色に包まれた。  そして、数十年の時が流れた……。
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