第五章  挑戦状

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「あの氷は世の腐敗と不浄から生神様を御守りしているんだ。生神様は人間の体を借りていらっしゃるが、生神様が宿られる体は普通と違って低温に耐えられるように成るから心配はいらないのだ。生神様が自らそうおっしゃっているのだから、だいじょうぶだ」  男は力づよくそう言って頷いた。俺は少年教祖が自らそう言ったと聞いて頭の片隅で考え込んだ。そう言わされているのか、洗脳されて自らそう信じ込んでいるのか……。  俺は思案気に首をかしげた。 「僕もお会いできるかなあ」  少年教祖がどこにいるかの手掛かりだけでもほしい。無理とは思うが駄目でもともとだ、言ってみると、男は座って俺の手を握りながら囁く。 「願い事があるなら連れて行ってやろうか」 「本当ですか!?」  しめた、と俺は心中で拳を握りしめる。  男は、ああ、と請け合った。 「3日後に大事な祝祭があるんだ。いまは半死半生の生神様が復活して全知全能になられる。犠牲を捧げて、願いを叶えていただくのさ」  俺は彼の言葉にとびつくように身を乗り出した。 「生神様はどちらに? 祝祭じゃ人がたくさんでしょう。その前にもっと近くでひと目でも拝んでみたいです」  男は頭を振ってうすい笑みをうかべた。 「気持はわかるが、生神様は祝祭前にはお会いにならないよ」  そうですか、と俺はつまらなそうな顔になり、腰を浮かす。 「案外けちなんですね」  待て、と男が俺をひきとめた。しばらく渋面をつくっていたが、紙に住所を書いて渡してくれる。 「この場所は他言するな。祭では生きた子どもの血を犠牲に捧げるんだからな。生神様に会いたいなら、君は俺と一緒に行くんだ」  耳もとで囁かれた言葉に俺はぎょっと男の目を見返して、そこにうかんでいる狂気めいた光にぞっとする。生きた子どもの犠牲だって?  背筋を冷たい汗が伝った。体温が何度か下がったような気さえする。  かろうじて頷くと、俺は無理矢理に人なつっこい笑みを浮かべ、待合わせしましょうと言った。場所と日時を約束し、会釈して店を出る。外には豆腐屋が待っていた。俺は赤スカーフの男から受け取った住所を渡す。
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