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豆腐屋はかさかさと紙片を開くと、すぐに目を上げた。
「こっちも氷屋に確かめてきました。最近大量に受注するようになった民家……住所は同じです」
豆腐屋は俺の顔を見返す。「こいつは、当たりですよ」
あとから七花さんと夜草も出てくる。
「どうでした」
そう言った夜草はすぐに俺の顔色をみて口をつぐむ。生贄の話の後で、胸糞が悪かった。顔に出ていたかもしれない。俺は黙って懐から眼鏡を出し、かけ直す。
豆腐屋が二人に紙切れを渡して低く説明している。その話がとぎれたので、俺は口を開く。
「明後日、少年神復活の儀式がある。子どもの生き血を捧げるそうです」
俺は皆の顔を見渡した。
「どうします。犠牲になる予定の子どもは?」
夜草はただ七花さんに目をやった。豆腐屋が横から呟く。
「その子どもがどこにいるか、誰なのか儀式になるまでわからんでしょう。きっと弟さんと同じく、攫われてきた子でしょうがね。弟さんだけなら儀式前に連れ出しちまえばなんとかなります」
「そういうわけにはいきません」
黙って聞いていた七花さんが静かに言った。首を振って言う。
「2人とも救いだせませんか?」
「どうやって、ですかい」
豆腐屋ができっこないというように強い語調になり、顔をしかめた。
「この人数ではやつ等を止めるのにも無理があります。それに儀式前に生神様がいなくなっちまえば儀式そのものが成り立たないんですから、いいじゃありませんか」
「それは、そうですが……」
七花さんは目を伏せる。再び彼女を説き伏せようとする豆腐屋の前に、俺はのっそりと顔を出す。
「ちょっと待って。……何とかなるかもしれないよ」
いや、何とか、しよう、と俺は途切れ途切れに言い、咳き込んだ。
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