第五章  挑戦状

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 豆腐屋は唸った。このお人好し連合じゃ何ともならん、と彼は口の中でひとしきりぶつくさ文句を言ったが、ややあって大きく息を吸う。何か言いかけたがやめて、まあいいや、それよりもだ、とひとりごちた。懐から折り畳んだ新聞を取り出し、ばさっと俺の手に渡す。 「これ、見てください」  夕刊の見出しには『少年探偵現る』の文字がある。 「あ、これか。学校で見たよ。内容はまだ見ていないけど」 「じゃあ、読むんですね。あんたのお友達の教えてくれた推理がそっくり載ってます。正真正銘、本邦初公開の内容ですよ。……大事なのはそこじゃない。日付を見てごらんなさい」  日付、……どういうことだろう。俺は小さな活字を目で追った。 「今日の日付……?」 「敵はあんたの近くにいますよ」  豆腐屋は俺の目をまともに見て言った。俺は豆腐屋の目を見返し、黙る。 (瑛二が一昨日教えてくれたのは『新聞に載ってた』推理だ。だけど、その推理が新聞に載ったのは今日。……順番が逆だ)  まだ新聞に載ってない推理を、なんで瑛二が知ってたんだ?  敵って?  俺は目がかすむのを感じて、目をこすった。  夜草(やそう)と七花さんが眉をひそめて豆腐屋を見る。 「すみませんが、送ってさしあげてください。具合が悪そうです」  はいよ、と豆腐屋は俺の背中を押した。低く念を押す。 「学校ではくれぐれも言動に気をつけてください」  俺は彼の大八車へ転がりこんで言った。 「わかった……すまん、話は後で」  本当にわかりましたね、と豆腐屋はふたたび念を押し、大八車を引き出す。  俺はいつもより荒い運転に石ころのように揺さぶられ、薄暗い空を見上げる。  白い点のように星が光っている。
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