第五章  挑戦状

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(似ている……気がする)  俺は人の顔の覚えがいい方ではない。まともに顔を見たのは一瞬だから、確信はもてなかったけど、雰囲気は似ている。  目にかぶる髪の長さとか、きゃしゃな首の線。それからじっと人を見る澄んだ大きな目も……控えめに言ってそっくりじゃないか?  あの探偵が瑛二だとしたら?  それでわかる。警察も知りえないような商家の主人の性癖を知っていたことも、事件の最新情報を先回りして知っていたのも、新聞社が学校に取材に来ていたのも。  いや、本当はとっくの昔にわかっていたのかもしれない。  ただ、考えないようにしていたんだ。  ぼう然と瑛二の顔を見つめている俺に、瑛二は顔を赤らめて横を向き、眉を寄せると、乱暴にごしごしと手の甲で紅を拭いた。  一緒じゃないか。仕草まで、あの時と。  瑛二が手でふいたくらいでは紅は落ちず、俺は茫然としたまま手ぬぐいを差し出した。  瑛二は俺の手から布きれを奪い取り、ぐいと拭き取る。それを俺の手の中にぽいと投げ入れると背を向けた。 「馬鹿。早く寝ろ」  そう言い残した言葉がかすれていた。
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