第五章  挑戦状

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 途中で誰かに声をかけられていたようだが、恐らくホラ貝だと思う。俺はしゃがんだまま、ひそかに雪柳の茂みを離れた。   ※     ※     ※ 「警察はなんて?」  俺はごそごそと刺しかけの作品を箱にしまいながら尋ねる。手を伸ばして瑛二の机の棚へ箱をしまわせてもらうと、勉強室の机に座ってぼんやりそれを眺めていた瑛二が、うーん、と唸る。 「君の推理を聞きに来たのか?」  振り返って尋ねると、瑛二は無言で俺を見返した。俺はしかめつらになって言う。 「噂の少年探偵って、君だろ? 俺にまで隠すことないのに」  瑛二はしばらく固まっていたが、ややあってぎごちなく笑った。 「バレたか」 「バレいでか」  俺は淡々と答え、瑛二は目を落としてまあいいや、と独り言を言う。 「いつ気づいた?」 「警察が何度も君に話を聞こうとするのもおかしいけどさ。この間食堂で話してたの、新聞の記者だろ。とどめは、あの新聞……」  俺は言って、瑛二の顔をまともに見た。 「記事を手で隠しただろ? 君があの推理を話したのは3日前で、新聞にそれが載ったのは昨日の夕刊。君が話したのは『新聞に載ってた推理』なんかじゃなくて、『君の推理』だったんだ」  瑛二は机に頬杖をついてのろのろと言う。 「名推理だね」 「馬鹿にしてるな。なんで隠してたんだ」 「最初は誰にも言う気がなかったからね。推理が外れると恥ずかしいだろ? 警察や標的になりそうな家に通報こそしたものの、最初は警察も信じちゃくれなかったし。でも、予想外に騒ぎが大きくなったから、そろそろ君には話そうと思ってた頃合いなんだ」  瑛二はそう言いながら、机の上に見るともない視線を投げる。
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