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「あの先生、冬多はシゼンのことをまったく知らないのに、シゼンのほうは冬多のことをすごく詳しく知っているんです……そういうケースってよくあるんですか?」
進一郎のこの質問には越知は困ったように眉を下げた。
「うーん……。解離性同一性障害はまだまだ分からないことだらけだからね、一概には言えないかな。けれども、もしかしたら幼い頃は、冬多くんもシゼンくんの存在を知っていたのかもしれないよ。互いに『会話』を交わしたりもしていたかもしれない。
それが成長とともに、シゼンくんの一方通行になってしまった。……そんなふうに考えることもできるよね」
「……冬多は治るんでしょうか……?」
「治ると思うよ、僕は。冬多くんはもう独りぼっちじゃない。進一郎くん、君がいるから」
越知はそう言うと、穏やかに微笑んでくれた。
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