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佐藤進一郎が、矢島冬多の席の横を通るとき、制服のシャツの裾が引っかかり、机の上に置かれていた本を落としてしまった。
「あ、ごめん、矢島」
進一郎はすらりとした長身を折り曲げ、本屋のブックカバーがかけられたその本を拾った。
「う、ううん」
冬多はうつむいたまま、進一郎から本を受け取った。
「矢島って、もしかして、ミステリーとかホラー小説好きなのか?」
進一郎の問いかけに、
「えっ……?」
冬多は瞬間、弾かれたように顔をあげたが、すぐにまたうつむいてしまい、か細い声で答えた。
「……うん。まあ……」
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