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 この顔も身体も、持って生まれた武器だ。都合の良いように整える。彼は長い髪を左肩から前へ垂らした。これから会う男たちに見せつけるために。  バスルームから向かうのは、朝食の席。  広い屋敷の長い廊下を迷いなく進んだ彼が開けた扉の向こうには、既に顔が揃っていた。 「遅くなりました、皆さま。おはようございます」 「おはよう、ヴァレンタイン君。なに、気にすることはないよ。身体の調子はどうかな」  長いテーブルの、一番奥は空席だった。その手前に座っていた男が立ち上がりながら腕を広げている。レグナーだ。 「おかげさまで、すっかり良くなりました。昨晩はご心配をおかけしてしまって」 「いやいや、それこそ気にすることはない。体調が戻って何よりだ。さあ、朝食もしっかり食べなければね」  言葉と表情だけを素直に受け取るのならば、レグナーは柔和で世話焼きな好々爺……、と言うにはまだ若いか。とにかく、敵意や画策など微塵にも感じられない。しかしヴァレンタインは退くべき一歩を、いっそ神経質なまでに意識する。こちらも、笑顔だけは絶やすことなく。  この屋敷の新たな主人として、ヴァレンタインは最奥の席に着く。  居並ぶのは、錚々たる面々。     
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