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「坊ちゃん……、いえ、旦那様。お部屋まで、ご一緒に」 「ええ……。ありがとう」  自室までは大した距離ではない。しかしヴァレンタインは、今は執事の手を取った。とにかく部屋に戻ることが先決だった。頭の中に渦巻く思考を纏めるためにも、一刻も早く重苦しい喪服を脱いで、ベッドに転がってしまわなければならない。  普段の半分も動かない彼の優秀な頭が、早急に打ち出した言葉。  コーツベルグ卿は、敵である。
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