2-2

2/14
310人が本棚に入れています
本棚に追加
/261ページ
「……あなたのその軽口が聞けて、安心しました」 「おや、悪魔の声に安心するとは。珍しい台詞を聞けたものだ。ふふ、知っているとも、愛しいヴァレンタイン。巡礼の話を、あのクレオンジュとやらにしたのだろう?」  見透かした口調。人間のものではない瞳が暗闇に怪しく輝く。聞いていたのか、見ていたのか。ヴァレンタインはそれを問いただすことはしなかった。何にせよ、追い払う気も無いのだから。  この悪魔が変わらずに傍にいること。今の彼にとって、重要なことはそれだけ。  数か月の日がたった今、彼らは自分たちの関係をある一点に落ち着かせていた。  ベスにとっては、落ち着かされた、と言った方が正しいか。この悪魔は最初、当然のことではあるがヴァレンタインに過剰な警戒を食らわされ、どうしたものかと頭を捻った。そこで彼が行ったことは、実に単純。  毎夜、手土産を持って現れることにしたのだ。     
/261ページ

最初のコメントを投稿しよう!