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 穏やかな春の陽気も、日に日に顔を変えていく。日照時間は長くなるが、気温はそう大きく変わることはない。少しずつ空気が乾燥し、鮮やかな花畑の季節から、青々と広がる芝生のそれへと。 その折、帝都で叙爵式が行われた。ヴァレンタインが皇帝によって正式に「シェリンガム侯爵」の位を賜ったのである。全て儀礼通りに、特筆するべきこともなく平穏無事に終わった式から、ヴァレンタインはほとんどとんぼ返りのように領地へと戻った。帝都には学友もいるが、彼らには会わなかった。意図的に、と誰もが感じただろう。     
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