第二部 森の精霊

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第二部 森の精霊

 大地へと落ちた呼得火は魔力を吸われてしまわないようにその身を黒き獣に変え、森へと消えた。人間は森へ一歩入れば生きて出られることはなかった。呼得火の人間への怒りは森を焼き尽くしてしまってもおかしくないほどであった。呼得火に森を焼かれることを恐れた人間は森の精霊に頼った。森の精霊は帯阿羅の分かれた四つの体のうち、静かに潜み、快風を起こし、すべてを沈静するのに長けた「四翼の鷲」となった。そして呼得火の元へと向かった。  森の奥深くに呼得火はいた。眠れる呼得火は黒き炎をまとい、周囲の木は燃え尽き、岩は黒く塗られていた。怒りの炎は鷲となった森の精霊へも襲いかかった。森の精霊はあらん限りの力で風を起こし、その身を守った。その気配に呼得火は気づき、目を覚ました。森の精霊の沈静の風は呼得火の怒りを抑えていた。もし、次に呼得火の炎を浴びれば、その身を守ることは困難だと思った森の精霊は、 「森を焼くのをやめてください。その代わりと言ってはたいそう過ぎますが、私が火神(*呼得火のこと)の翼となりましょう。」 これを聞いた呼得火は天界に帰るには翼がいると考え、森を焼くのをやめた。これ以降、森の精霊は呼得火に付き従うこととなった。
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