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そしてさすがは神様です。病院にいる少年と、公園にいる町の人々の様子をチラッと見ただけで、何が起きたのかを見て取る事ができたのです。
「あの子供は、あれほど町の人々にかわいがられていたのか。やはり殺すのはかわいそうだ」
そう言うと、神様はさっと腕を振り、少年の体から病気を消し去ってしまいました。
「それに、あの子は病気で苦しい思いをしたのだ。少しぐらい幸運があってもいいだろう」
そうして、神様はもう一つ腕を振ったのでした。
春を迎えられなかったはずの少年は、すっかり元気になり、数日後には退院できました。。病気が治った原因はお医者様にも分かりませんでした。
いつまでも紙の花を飾ってはおけません。町の人々は、話をしながら枝の花を外していました。道に落ちた紙きれも掃除をしなければなりません。先日降った雨のせいで、ゴミは道にへばりついてなかなか離れませんでした。
幼くして亡くなる悲劇の少年と、彼の願いを叶えてあげる心優しい町の人々。町の人が思い描いていた美しくも悲しい、感動の物語は、あっさりと消えうせてしまったのです。
「あの子は、もう退院したの?」
掃除の手伝いに来ていた女の子が、自分のお父さんに聞きました。
「そうだよ。よかったねえ」
「え、ずる?い!」
女の子は怒ったように言いました。
「だって、お父さん全然遊んでくれなかったじゃない! ずっとお花造ってばっかりで!すぐ死んじゃうかわいそうな男の子のためだって聞いたから、我慢して……」
「し?!」
慌ててお父さんは少女の口を押えた。
そして周りの大人にごまかすような笑みを浮かべました。周りの人も「子供のいう事だから」というように苦笑しましたが、怒ったりしませんでした。
「やれやれ。仕事を休んでいたから、溜まった分をこれからやらなければ」
「そういえば、紙のお金は皆で折半よね?」
「え? あの混ざっていた宝石分も? 私は嫌よ。高くなるからやめましょうって反対したもの」
「そういえば、あの子の母親、株で大儲けしたんですって?」
「なんでも、今までの治療費をまかなってもまだお釣りがくるくらいですってよ。贅沢をしなければ当分食べていけるんじゃないかしら」
「運がいい事ね。少しぐらいかかった経費、払ってもらえないかしら」
「バカねえ。そんなお願いみっともないわよ。こっちは善意でやったのだから」
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