酒場

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「“約束”したら守らないといけないんだとさ」  何かを思い出すようにルピナスは言う。 「はあ?何のはなしぃ?」  薄暗い店内は煙草の煙で覆われ、薄汚れた夜の空気が充満している。  地下の居住区全体に蔓延する、絶望と苛立ちの空気だ。 「何の心境の変化か、この東一の悪ガキは、最近妙に素直なのよ」  ルピナスの髪をいじる柘榴の手を叩き落し、「気安く触るな!」と、東居住区一の悪童は辛辣だ。 「俺はもう帰るぜ。家の時計は狂ってっから、寝かしすぎて腐っちまったら大変だからな!」   「腐るって、何が腐るのー?さっきからやっぱり、訳わかんなーい、ルピナスー」  今、酒を飲んでいても、店を出てねぐらに戻るまで、命があるかどうかは誰にもわからない。  だがそれも繰り返される日常なので、人々は自分の命すらも賭け事の一つだ。    そう、運が悪ければ死ぬだけなのだ。
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