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視線を感じていた。
最近、朝や夕方、庭に出るとじっと見られている気がした。
庭に大きな桜の樹がある、一人暮らしには広すぎる、しかし、家賃が嘘のように安すぎる一軒家に引っ越してもうすぐ半年になる。
淡い緑色だった新緑が、濃い緑色に変わりつつある五月の終わり、俺はゆっくりと辺りを見渡した。
リスでも住み着いたかな?
いや、そこまで自然豊かじゃないだろう・・・。
俺の実家であり、勤め先でもある坂崎手芸店と私鉄ローカル線を挟んだ線対称に位置する貸家。
駅裏になるからか、緑が豊かだし、坂道の下にある住宅街の中にはあるけれど、さすがにりすは、な。
ふと思い付いて、洗濯物を干す手を止めると俺は生け垣の横の木戸を見た。
道路に面した木戸の脇には、子供が出入りできるくらいの空間が空いている。
体を木戸の方に向けた時、その空間からこっちを見ている目に気づいた。
道路を挟んだ奥の歩道に、自転車に跨がった白いシャツの少年がいた。
その子の視線は、まっすぐにこの庭に向いている。
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