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ドアを開けると、穏やかな匂いの香が焚かれていた。優希の好きな香りだ。ローテーブルには、冷たい飲み物と軽食が準備してある。
湯上りで喉が渇いていたので一口飲み物をいただくと、優希は奥の寝室へ向ってみた。おそらく、ほどなくして談笑をしに要人が訪ねてくるだろうから、ただちょっとだけ覗いてみるつもりで、そんな気軽さで寝室のドアを開けた。すると。
「やぁ、優希。思ったより早かったな」
要人がベッドに横になっている!
これには少し驚いた。ただ、やけにニヨニヨして自分の隣をぽんぽんと叩いてみせる要人に、優希は軽く笑った。
子どもの頃は、宿舎の消灯時間を過ぎても二人でこっそりベッドの中でゲームをして遊んだりしたっけ。そんな風に考えながら、無防備に要人の隣に滑り込んだ。すると。
「優希……」
要人が速攻押し倒してきた!
「えっ、えええ!? ちょっと待て!」
優希は要人と自分の体との間に両腕を畳んで挟ませ、のしかかってくる体をどけようとしたが、容赦なく抑え込まれる。
もがき、暴れる優希に、要人は少しだけ力を緩めた。
「ん? あれ? 初めてじゃないよね?」
優希はもう、必死になって要人に訴えた。
「なくたって、この場合何の役にも立たないと思うんだけど!」
ええと、とそこで要人はようやく優希の上から身を起こした。
「確かに……、俺も男同士で、ってのは初めてだけど」
こくこくと夢中で首を縦に振りながら、優希は重ねて訴えた。
「そして、なぜ僕が下であることが確定事項のようになってるのかな!?」
「えっ? 俺、その逆なんて1ミリも想像してなかったんだけど……」
当然のような要人の返事に優希はひとつため息をつくと、自分ものろのろと体を起こした。
「ちょっと……、タブレットあるか?」
ベッドから降りて、タブレットを取りに行く要人。優希は、ばふんと枕に突っ伏した。
あぁ、もうこのまま寝てしまいたい!
しかし、これは要人と付き合っていく上で重要なことであるので、しかたなく優希は再度起き上がり、戻ってきた幼馴染からタブレットを受け取った
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