19.[番外編 リ、リアリィ?~really?~]知人の愛

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『なるほど』と言う代わりに、 まばたきを多めに繰り返す。 そんな私に中田さんは尚も続ける。 「婚約者っていうのも これまた勝嗣さんが勝手に決めた女でさ、 でもまあハッキリ断らないのは、 政市さんの方も情が湧いてるんだろうな。 …悪いことは言わん。 黒木、お前は諦めろ」 そっか。 やはり私の気持ちに気づいていたから、 こんなにシッカリ説明してくれたんだ。 「…はい」 哀しいけれど、そう答えるしか無かった。 いいんです。 たぶん、私では手に負えない男性だから。 それにあの人が私を、 本気で相手にするワケないし。 「っと、じゃあ俺は政市さん… やっぱ言い慣れないな。 丹波さんに親父さんからの電話を伝えて、 そのまま竜ケ崎先生のところに向かうぞ。 黒木、お前の午後の予定は?」 「マミ先生と新作の打ち合わせです」 バタバタと出掛ける準備をして。 廊下で偶然、烏丸さんと一緒になり、 そのままランチを奢って貰ってから 手土産を購入してマミ先生宅へと向かう。 ここ数日、通い慣れたマンション。 私の少ない荷物は出勤前に タンバたんの車で運び出したので、 今晩からは『みどり荘』での生活に戻る。 あの楽しかった暮らしにはもう、 戻ることは無いのだ。 そう思ってホロリとしていると、 マンションのエレベーター内で グラマラスな女性と一緒になり。 その隣にはタンバたんが 寄り添うように立っていた。
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