3 ミスティ村の宿屋の娘たち

4/7
前へ
/25ページ
次へ
「ミランダお姉ちゃん、リアムが魔王を捕獲(ほかく)してきたのよ!」  宿屋に駆け込むと、シェリルは受付にいたミランダに言った。  ブラウンの瞳にブラウンの髪の、メイド服を着たショートボブのミランダはゆっくりと顔を上げた。 「魔王? 捕獲?」  ミランダはそう言って首を傾げた。 「声が大きい……」  リアムがミシェルを背負って入っていき、シェリルに注意をした。 「ごめんなさい、シェリル。何を言っているのか、わからないわ」  長女のミランダは冷静にそう言った。 「魔王の玉座のところで泣いてたんだ」  そう言って、リアムはミシェルを受付前の椅子に下ろした。  ミシェルは眠ったまま座らされた。 「魔王の間までひとりで行ったの?」  ミランダは受付から出てきておっとりと聞くが、とても驚いているようだ。  そして、小さな子供の前まで来ると、椅子の前でしゃがんで優しく顔に触れる。 「お肌がすべすべ」  ミランダはミシェルの頬を撫でまわす。 「人間の子供でしょ? 魔王は代々血色が悪いおじさんかおじいさんと決まっているのよ」  ミシェルは血色のよい子供だった。 「自分で『魔王』だって言ったんだ」 「言っただけでしょ?」  シェリルはリアムの言うことをうのみにしていたが、ミランダは信じていなかった。 「額に『魔王の印』がある」  リアムがそう言ったので、ミランダはミシェルの前髪をかき上げて額を見た。 「まあ……」  子供の額に大きな宝石が埋め込まれているのを見て、顔をしかめる。 「なんてひどいことをするのかしら。こんな小さな子供にこんなことをするなんて」  リアムとシェリルは長女の言うことを聞いて、言われてみれば、そうかもしれないと思った。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加