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4 その日の夕食
「魔王?」
ミランダと同じ顔をした次女ブレンダは、食堂で夕飯を食べているミシェルをまじまじと見た。ミシェルはお腹が空いていたようで、長女ミランダの隣で、小さいながらも懸命にシチューを食べている。
「ご飯、ふつうでいいの?」
食事係のブレンダは心配そうにリアムに聞いた。
「いいんじゃね? 食ってるし」
リアムも用意されたシチューをミシェルの正面で食べていた。
今日は両親は村の会合という名の食事会に行っていたので、子供たちとリアムで食事の予定だった。それぞれが勝手な時間に帰って来るはずだったので、いつでもすぐに温め直せるシチューをブレンダは作っていた。
近頃は魔王攻略よりも地下迷宮攻略が流行っていたので、客のいない日も多かった。それでも急な客もいないわけではなく、ミシェルが食べても余るほど食糧はあった。
ただ、客と言っても、ミシェルから宿泊代を取るわけにもいかない。
人の善い宿屋夫婦が、こんなに可愛い子供から宿泊代を取るとは考えられなかった。
三姉妹もそれに異論はまったくなかった。
料金を取らないとしても、食事係のブレンダとしては、客の好みの食事をできるだけ出したいと思っていた。
「魔王って、昆虫とか猿の脳みそとか食べるんじゃないの?」
ブレンダはミシェルとミランダに聞こえないようにリアムに言う。
「……食わないと思う」
ため息交じりにリアムは答えた。
「でも、魔王でしょ?」
「魔王って言っても、一番強い魔族ってだけだ。人間も魔族もどっちも雑食だから、同じ物でいいはずだし」
「ねえ、本当に一番強いの?」
それを聞いた、リアムの隣に座ってシチューを食べているシェリルが、小さな声で聞いてきた。
「さぁ……」
それはリアムにもわからなかった。
リアムもそれを知るためなのか、ミシェルの様子をじっと見つめる。
ブレンダとシェリルもそれにつられて自称魔王と長女を見た。
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