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「…………ようやく、ここまで来たんだ」
リアムは、たった一人で魔王の城の最上階にある魔王の間の前に来ていた。
日に焼けた肌に、人間では見かけない赤い瞳。そして銀色の髪。
人間というよりも、人語を理解する上級魔族に近い風貌をしている。
実際、リアムの父親は上級魔族で、母親は人間と魔族の混血だった。
リアムに人間の血は四分の一しか流れていない。
でも、彼はここに人間として居た。
人間として魔王を倒し、その魔王の側近である父のテレンスに、どうして自分を捨てたのか聞こうとしていた。
この扉の向こうに、魔王がいる。
最強の魔法を使い、人間など虫けらのように蹴散らす怖ろしい魔物が。
四分の一だろうと、人間の血が混じっている自分が敵うはずがない。
けれど、リアムは扉を開ける。
弱い自分に負けないために。
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