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5 バトルフィールド
「いやああああああああ!」
けたましい子どもの叫び声が、穏やかな草原に響いた。
「なんで?! どうして?! モンスターがボクを襲ってくるの?!」
ミシェルは半狂乱になって叫んだ。
「そりゃ、お前が一番弱いからだろ?」
リアムは呆れた顔でそう言って、巨大なクモのような昆虫系モンスターを一刀両断にした。大きいだけで手ごたえはなかった。
ミシェルは必死の形相でミランダの姿を探すが見当たらない。やむを得ずという感じでブレンダのところに行くが、何か勝手が違うようだ。
太陽はサンサンと輝き、青空が広がっている。ミスティ村を出てすぐ、大した障害物もない緑の原を僧侶のリアム、魔王使いのシェリル、斧使いのブレンダ、一番小さくて軽いナイフを装備したミシェルで歩いていた。
心地よい風が頬を撫で、警戒しなくても大した敵は出てこないエリアで、ミシェルはガタガタ震えていた。
「怖いっ! 怖いっ! モンスター怖いよっ! 何アレ、気持ち悪いし!」
恐怖で顔を真っ青にしてブレンダの後ろに隠れたミシェルはリアムに訴える。
「お前、アレの親玉だろ?」
魔王の間にミシェルが居たのを見ていたリアムでさえミシェルが魔王だというのが信じられなくなっていた。
「違うよ、そんなことないもん」
そう言って、ミシェルはポロポロ涙をこぼした。魔王ならば『アレの親玉』のはずだとリアムは思った。
「ふぇ~ん、イヤだよぉ。怖いよぉ~。モンスター、イヤだぁ~」
パニックに陥ったように泣き出した。
「うわ~ん! うわ~ん! うわ~~~ん!」
火が付いたようにミシェルは泣き叫ぶ。
「お守り、置いてきたのは失敗だったな」
リアムがシェリルに言う。
「ミランダお姉ちゃんを置いて行こうって言ったの、リアムだからね」
いまさらながら姉の偉大さを知ったシェリルだった。
「まさか、こんなに手が付けられなくなるとは思わなかった……」
かしましい三姉妹をひとりでも多く置いていきたいと思ったリアムは、自分の考えが甘かったことを痛感した。
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