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2 魔王?
「うわ~~~~ん!!」
観音開きの扉を開けた瞬間、聞こえてきたのは、耳をつんざく子供の泣き声だった。
(なぜ子供の泣き声が?)
と思ったリアムは泣き声のする正面を見た。
泣き声はそちらから聞こえていた。
赤い絨毯がまっすぐ敷かれたその先に、魔王のための玉座がある。その広い部屋には魔王の玉座しかなかった。
座るだけなのに、椅子の周りが根っこのような物で覆われている。
何のためにそれがあるのかわからなかった。
イバラのようにも見える物体に囲まれた玉座。
でも、そこに座っているわけではない。
魔王の間に訪れた者を見下ろすがごとく、数段の階段の上に玉座があるのだが、その階段の一番上に座り、大声で泣いていた。
「うわ~~~~~ん、うわ~~~~ん!!」
村でもよく聞く、子供の泣き声だった。声変りもしていない、耳触りなキンキン声。
子供が魔族に誘拐された話も聞いていない。
リアムが住んでいるミスティ村は魔王の城から2時間歩いた場所にある。
そこが魔王の城に最も近い人間の村だ。
村の子供なら、リアムとも顔見知りだ。
服装が金持ちの子供のようだったので、他の場所の貴族の子供をさらってきたのかもしれない。人間の世界のことは、こんなへき地にまで伝わってこない。
魔族からすれば、ここは都会のど真ん中になるのだろう。
でも、人間はいない。
モンスター狩りが冒険者たちに好まれてするようになってから、モンスターの数は減ってきている。それでも魔王のいる城の周辺はさすがに魔族のテリトリーだ。
(罠かもしれない)
真っ先にリアムは思った。
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