5人が本棚に入れています
本棚に追加
(なんで子供が?)
入り口の門番を倒し、スライムを倒して、魚を倒して、カエルを倒して、オークを倒してドラゴンを倒して、さんざん苦労をしてここまでたどり着いたのに、極悪な魔王が玉座にいるかと思いきや、いたのは小さな人間の子供一人だった。
「おい……」
リアムが近寄って声をかけると、子供はビクっと泣きやんだ。
怯えた顔で、恐る恐るリアムを見上げる。
「誰?」
恐怖が顔一面に現れている。
「怯えるな。俺はこれでも人間だ」
リアムは上級魔族に間違えられることが多かったので、言いなれている言葉だった。
「に……、人間?」
けれど、その子供は恐怖をさらに強めた。
とって喰われるのではないかと怯えている顔だ。
モンスターに遭遇してしまった人間がする表情だった。
「そうだ」
リアムは苦虫をかみつぶしたような顔で言った。
「ホントに?」
「……ああ」
「う……」
みるみる子供の目に涙があふれてくる。
「え?」
リアムは魔族と勘違いされて泣かれたことはあるが、人間だと言って泣かれたことはない。
「うわ~~ん、うわ~~ん! うわ~~~~~ん!」
近くで聞くと、さらにうるさい。
最初のコメントを投稿しよう!