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「お……俺は、人間だが、テレンスの息子だ」
耳を押さえながらリアムは言った。
子供は息をのんで泣きやんだ。
「テレンス、人間じゃないよ」
可愛らしい声だった。
天使の声と言ってもいいような澄んだ高い声だった。
潤んだ瞳でリアムを見上げる。
邪心などかけらもない、純真無垢な子供の顔だった。
テレンスのことは知っているようで、リアムはひとまずほっとした。
「あいつは……、魔族だ」
テレンスはリアムの母親と違って、純血の魔族だ。
ただし、王族ではない。
「じゃあ、魔族?」
あまり答えたくない質問だった。
リアムはほとんど魔族だ。
「人間の村で育っているから、魔族としての自覚はない」
「……ボクを倒しに来たの?」
新たに出てきた涙を目にいっぱい浮かべて子供は言った。
本当に悲しくて仕方がないという顔をしている。
「なんで……、俺がお前を倒さなきゃなんないんだ?」
「だって、ボク、魔王だもん」
そう言うと、ポロポロポロポロ涙をこぼした。
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