2 魔王?

5/8
前へ
/25ページ
次へ
「お……俺は、人間だが、テレンスの息子だ」  耳を押さえながらリアムは言った。  子供は息をのんで泣きやんだ。 「テレンス、人間じゃないよ」  可愛らしい声だった。  天使の声と言ってもいいような澄んだ高い声だった。  潤んだ瞳でリアムを見上げる。  邪心などかけらもない、純真無垢な子供の顔だった。  テレンスのことは知っているようで、リアムはひとまずほっとした。 「あいつは……、魔族だ」  テレンスはリアムの母親と違って、純血の魔族だ。  ただし、王族ではない。 「じゃあ、魔族?」  あまり答えたくない質問だった。  リアムはほとんど魔族だ。 「人間の村で育っているから、魔族としての自覚はない」 「……ボクを倒しに来たの?」  新たに出てきた涙を目にいっぱい浮かべて子供は言った。  本当に悲しくて仕方がないという顔をしている。 「なんで……、俺がお前を倒さなきゃなんないんだ?」 「だって、ボク、魔王だもん」  そう言うと、ポロポロポロポロ涙をこぼした。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加