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「魔王討伐に来る人間は今までにもいただろ?」
「ここまで来れないもん」
拗ねたようにミシェルは言う。
リアムもここまで来るのに三年かかった。
魔王の城だけあって、出現するモンスターはかなり強い。
「魔族に守ってもらえないのか?」
「ボクを見たら喜んで倒そうとするよ。ボクを倒せば、そいつが魔王になるもん」
魔族は強い者が魔王になる。
「だから、魔族には会わないようにしてる」
「親父の指示か?」
リアムの言葉にミシェルはコクンとうなずいた。
リアムはミシェルをじっと見つめる。
魔力もほとんど感じられないし、顔を動かした時も、大した力がないのがわかった。
村で元気に遊んでいる子供たちとほとんど変わらないただの子供だった。
「魔法は使えるのか?」
「っ……!」
ミシェルは何かを言いかけて、唇をかんだ。
「どうした?」
「呪文は知ってるけど……」
か細い小さな声で言う。ここまで悲しみを湛えた声を、リアムは今まで聞いたことがない。
「唱えてみろ」
リアムが言うと、ミシェルはよろよろと立ち上がり、たどたどしい足取りで階段を降りていく。
その様子をリアムは見ていた。
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