あなたと涙

6/7
前へ
/21ページ
次へ
「ジャックのいない日はなかったの。わたしが物心ついた時には一緒にいたんだから!」 「悪かった」 「あなたになにがわかるの! ずっとあった温もりがなかったのよ。玄関に首を向けたままで」  思い出すだけで辛く、悲しくて涙が流れていく。頬を伝う涙が制服を濡らす。  うまく言葉が紡げないことに花奈は苛立った。 「本当はもっと一緒にいたかったのよ。ジャックはもっと遊びたいって思ってた。きっと、きっと!」  ついに花奈は泣き崩れてしまう。咲也はそんな花奈に何をするでもなく、黙っていた。  長い沈黙だった。ただ、花奈の泣く声だけが聞こえる。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加