本編

7/7
前へ
/7ページ
次へ
小さな子供が母に尋ねる声がする。 「ママー、これなぁに?」 子供が指差したのは、小さなトロフィー。 ガラス棚の中に小さく小さく輝いている。 沢山の権威ある旗やら賞状やらが重く鈍く光るその中で、そのトロフィーだけは気まぐれそうに羽を伸ばして、好きなように輝いているように見えた。 子供の母親は、自分の母校である校舎を懐かしそうに見渡した後、子供と一緒にガラスの中を覗きこんだ。 「ふふふ、懐かしいな。これはね、ママとママの友達が友達だっていう証、かな」 彼女はどこか遠い過去を思い出すように目を細めて、そう言った。 「ママが今、こうやって幸せである証でもあるのかな?」 母親の言葉はまだ子供にはよく理解できないことではあったが、子供もまた何かを感じて、瞳を輝かせた。 「へぇ! ママって凄いんだねぇ!」 そんな親子の後ろから、どこかで聞いたことのある、懐かしい声が追いかけてくる。 「朱美ちゃーん!」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加