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小さな子供が母に尋ねる声がする。
「ママー、これなぁに?」
子供が指差したのは、小さなトロフィー。
ガラス棚の中に小さく小さく輝いている。
沢山の権威ある旗やら賞状やらが重く鈍く光るその中で、そのトロフィーだけは気まぐれそうに羽を伸ばして、好きなように輝いているように見えた。
子供の母親は、自分の母校である校舎を懐かしそうに見渡した後、子供と一緒にガラスの中を覗きこんだ。
「ふふふ、懐かしいな。これはね、ママとママの友達が友達だっていう証、かな」
彼女はどこか遠い過去を思い出すように目を細めて、そう言った。
「ママが今、こうやって幸せである証でもあるのかな?」
母親の言葉はまだ子供にはよく理解できないことではあったが、子供もまた何かを感じて、瞳を輝かせた。
「へぇ! ママって凄いんだねぇ!」
そんな親子の後ろから、どこかで聞いたことのある、懐かしい声が追いかけてくる。
「朱美ちゃーん!」
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