Episode8 聖遺物を求めて

109/109
前へ
/286ページ
次へ
「そんなはずはない。金色の髪、顔立ち、そして何よりクレスの剣を使っている…君はアンジャナ以外の何者でもないはずさ!」 「違うのよ!私はアルモ!!三日月同盟のソレイユとリュンヌの娘、アルモなの!!」 「ええい!!何をごちゃごちゃとぬかしておる!!」 “ブゥン!!”  私とロザンが、私の出自について言い合ってしまったせいで隙が生まれ、二人で押さえつけているはずだったクビラが強引に私たち2人を押し返し、私たちは後方に仰け反ってしまう。  が、すぐに態勢を立て直した私たちは、再びクビラに向け、それぞれの得物を構える。 “““ザザッ”””  3人が同時に地面を蹴る。 “ギィン!!”  私よりもスピードの速いロザンが、クビラと刃を交える。  そして… 「ハァァァァァ!!!」 “ブゥン!” 「なんだと!?」  ロザンが気合を入れた掛け声と共に、自らの得物に力を込め、刃を交えているクビラの得物を上空へと吹き飛ばした。 「アン………いや、アルモ、いまだ!!」  得物を上空に飛ばされ、丸腰状態となったクビラに向かって、私は月明りの剣を振り下ろそうとする。  だが… 「我には水銀があることを忘れたか!?」 「!!まずいわ!ロザン、この場から離れて!!」 「アルモ、何を言って…」 「いいから言う通りにして!奴の…クビラの魔法は、まずいわ!!」 “ザザッ”“ザザッ”  クビラに飛びかかろうとした私はすぐに態勢を整えると、クビラとは反対方向に飛び退いた。  そして、私の忠告を聞き入れたロザンもまた、私よりもワンテンポ遅れて、クビラとは反対方向へと飛び退いた。 「その程度の距離で、我の魔法を完全に防げるとでも!?」 「安い脅し文句ね!この前の戦いで、あなたの魔法は見切っているのよ!?」 「ほほう。強くなっているのが、まさか自分たちだけだと、思い込んでいるだけなのではないか!?」 「なんですって!?」 「まぁ良い。我の魔法を見れば、すべて分かることよ。水銀の味、とくと味わうがいい!!メルクーーーーーリュス!!」  次の瞬間、以前戦った時よりも広範囲に、水銀の雨を降らせる雲が立ち込めると、一瞬のうちに水銀の雨が周囲を包み込んだのだった。
/286ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加