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1. 始末
......ザァーッ
雨が降っていた。虫、植物の青臭さ、潜む獣の影、山のなかは半ば静かでだが本降りになってからそこらに真鱈に形複雑になった水溜りが浮かんでいた。涙のように崖を流れる。雨に打たれながら髪はびしゃびしゃ。服も濡れて下着が透けている。肌に密着して臍も分かるし、胸の谷間も見えそう。
ゆっくり瞬きしながらさしていたボロ傘を下ろした。スカートも雨水をたくさん吸ってぽたぽた雨滴を落とす。滴下の数、速さは凄まじい。雪の降る寒い日に睫が凍ってくっついていたりするが、瞼からもそれが落ち私の靴先をひたひた濡らしてくのが把握できる。体は力尽きていく、体力を奪っていく。意識が混濁してく。重しが頭上、両肩にかかって膝が地面についた。重力に負ける。私は冷たい地面に頬をあて、口をだらしなく開けながら鳴り止まない雨音だけ遠ざかって聞こえてき…。
やがて目の前の山林はぼやけ、真っ暗だけになった。
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