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事の起こりは一ヶ月前。
秋名つぐみは入社して半年のまだ全然使えない秘書だった。
先輩たちが忙しかったので、初めて社長に珈琲を持っていくことになり、緊張しつつも、社長室へと向かった。
「し、失礼します」
つぐみが珈琲を持ってきたのを見て、先輩秘書の西和田が、社長が居る奥の院のような部屋のドアをノックする。
「社長、珈琲お持ちしました」
西和田は一応、そう言ったが、珈琲は元々社長の注文だ。
特に返事を聞く必要もなかったらしく、西和田はすぐに扉を開けてくれた。
普通、こういうとき、男性秘書が扉を開けてくれるなんてことはないのだが、別に、つぐみをお姫様扱いしてくれているわけではない。
西和田の顔には、はっきりと、こいつ、なにか粗相をしないだろうか。いっそ、俺が持っていこうかな、と書かれていた。
大丈夫ですっ、頑張りますっ、とつぐみが目で訴えると、西和田は、より不安そうな顔をする。
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