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輝虫
不思議なことを言う老人に出逢った。シラミが人の頭皮に寄生して生きているように、人に寄生しないと生きられない人間もいるのだと。それは「ヒモ」と呼ばれるクズの話じゃない。物理的に寄生して体を蝕んでいくのじゃ、と目尻にシワを寄せるのだ。
ナツミトウフは震えた。そんなシラミ人間に寄生されては、ただでされスッカラカンなのに、今度は厚みさえ失われたら紙屑になっちまう。
だから、すでに寄生されている人の見分け方を教えてもらったからここに記しておく。
身体的に特徴はさほど変わらない。
でもその中身はすっかり食べられているからカラカラで。小さくて輝く虫を飼っている。虫といっても人間界の言葉でいうと虫であって、シラミ人間語では「輝虫(キチュウ)」と呼ぶ。
とにかくその「輝虫」がやっかいだ。多ければ多いほど、肌は艶やかに見えて美しい。内側から発光して見えて、まるでその人間は常にスポットライトを浴びているように、眩しく栄えるのだ。
だが輝虫は秋の空より気まぐれで、旅好き。ふいにその相手に飽きると、肌から飛び出して他に寄生してしまう。
「飛べる先はせいぜい数メートルが限度だ」
そう老人はいった。
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