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柿田仁は、不思議そうな顔でわたしをみている。
「何?」
あれーーーどうしよう。
どっから言えばいいんだ。
「わたし、ビンタされた」
「え?なに?」
「だからわたしビンタされたの」
「誰に?」
誰にってお前の女だよ。そう叫びたいけど叫べない。
「えーーーと名前は分からないんどけど。西中の制服着た女子。あんたにちょっかい出さないでって言われたんだけど。
全然意味わかんない。どういうこと?」
柿田仁は、頭をかきながら小声で何か言っている。
「わりぃー俺のせいだ」
「え?何?どういうこと?」
「お前のこと言ったんだ。うちの学校に俺のタイプの子がいるって」
「は?何それ?」
こいつの無責任な言葉のせいであの女たちがわたしを探し勝手に嫉妬したってこと?
何それ!!
怖すぎる!!
「ごめん。でも、俺、別に西中の女と付き合ってねーし、俺の方が迷惑」
は?何言ってんだこいつ。
「はぁ?何言ってんの?!あの子はあんたと付き合ってるつもりなんじゃぁないの?だからわざわざわたしを探して学校まで来たんでしょ?!」
「知らねぇー。来いなんて頼んでねーし」
なんだなんだこいつの勝手な言い分は。
もういい。もういいや。
こいつと話しても頭がおかしくなりそうだ。
やめたやめた。
このまま巻き込まれたらまた、何が起こるか分からない。
今度はビンタではすまない気がする。
「もういいや。もういいいからお願いだからわたしにかまわないで」
その言葉を言うと柿田仁の顔を睨みつけ駆け足でその場から逃げた。
子供のわたしには分からなかった謎の感情。
嫉妬という怖い感情が少しづつ分かってきた気がした。
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