1 ボランティアたち

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それらは民家のようなものもあり、幾つかは小さなビルのようなものもある。 だが群生といっても、わずかに10を超えるほど。 それでも、ここが恐らく村の中心なのだろうと想像はつく。 まず確認できたのは、駐在所。 そこから数メートル先に、自宅と棟続きになっている商店が一軒あり、 その並びに小さな喫茶店らしきもの。 その向かい側に「工務店」と看板が掛かった事務所のような小さなビル。 そこから少し離れた場所に「スナック みほ」と扉脇に小振りの看板が 掛かった細長い二階建ての家みたいな建物。 そして、関係者のものだろうか。 看板も何もない民家らしきものが、それらを遠巻きするようにして 数軒建っている。 もちろん、この光景から村の人口の程が見て取れた。 だから、建物も隣接しているわけではなく、 都心ならば、優に家の二~三軒、 もしくは、それ以上が間に入りそうな空間を挟んでいる。 しかし、そんな場所であっても、 このジリジリと照り付ける日差しのせいか、人の姿は全くない。 ここで、ひと月か――。大丈夫か、自分?  そんな不安を煽る言葉が、彼の頭を掠めていく。 しかし、後戻りする気はなかった。 初っ端からビビって、どうするよ。 だから、自分に言い聞かせるように、 相も変わらずセミの声の中に自分の足音だけを耳にしながら、 爽平は、村の中心部をひっそりと通り過ぎつつ、 手にした地図に再び目を落とした。
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