1 ボランティアたち

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「牧菱村役場」という文字が薄れかけた看板が横に掛かった 安そうなスチール製の引き戸の前に立ち、爽平は、もう一度 手の甲で額を拭った。 ここか――。 所々、壁にヒビの入った役所の向かいには、 「集会所」と看板の下げられた大きな民家のような家が ひっそりと佇んでいる。 だが、この二軒以外に、辺りには建物は見当たらない。 どうやらここは、里山の一つの入り口に位置するらしく セミの声が、さっきよりも大きく感じられる。 それに包まれるようにして、爽平は、目の前の銀色の扉を引いた。 ふわっと流れ出てきた冷気の中に足を踏み入れると、 目の前には十二畳くらいの空間が広がり、 その中に、五人の男女がそれぞれのデスクに付いていた。 そして、彼らを包んだ空間の入り口にある 小さな受付カウンターに歩み寄れば、 彼に気付いた一人の中年男性が、薄いファイルを片手に笑顔で近寄ってくる。 「おはようございます。ボランティアの方ですか?」 たぶん、年齢は彼の両親と変わらないだろう。 その男に頷きつつ、爽平は、 チラッと胸に付いているネームプレートに視線を投げる。 その間に、ネームプレートと同じ名前の名刺が スッと彼の目の前に差し出された。
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