3人が本棚に入れています
本棚に追加
「私、この村興しプロジェクトの担当をしております大庭と申します」
「あっ、日辻です」
目の前の名刺を受け取りつつ呟くように名乗ると、
「日辻さんですね」と、大庭はファイルの中のリストに
小さくチェックを入れる。
そして彼は、相変わらずにこやかなままで
奥に、たった一つだけある扉へと手を伸ばした。
「では、説明会までは、まだ少し時間がありますので
あちらの会議室でお待ちください。
あぁ、暑いですからね。よろしければ、そちらの自販機もご利用ください」
ありがとうございます。
爽平は、小さく礼を口にしつつ頷き返した。
そして、示された奥の扉の横に置かれた自動販売機へと素直に向かい、
麦茶を一本購入する。
ガコンと大きな音をさせて出て来たペットボトルを手に
彼は、「会議室」とプレートの張られた下のステンレス製の扉に
手を伸ばした。
微かな音と共に開いた扉の向こうは、
役場スペースと、ほぼ同じ大きさの部屋。
そこに、左右に三列ずつの長机とパイプ椅子が設置されており、
一番後ろの隅に、若い男がポツンと一人座っていた。
最初のコメントを投稿しよう!