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しかし、二十歳になるからという訳でもないが、
一学年、大学生活が進級した途端、
彼は、にわかに今までのように流される人生ではいられなくなるものに
出くわした。
その名は、「進路」。
それも、今までのように成績だけで流される「進路」ではない。
これからの長い彼の人生の進むべき方向を見定める、決定的な進路だ。
しかし、これが爽平にとっては、なかなかの難問。
なにせ彼は、はっきりと自覚するほど野心とか夢とかとは縁遠く、
この年にしては、かなり無口な質が物語るように
とにかく地味で在り来たりな人間だ。
そして、野心や夢と縁遠い人間には、
この「人生の方向」を決める程の大きな決断は、かなり難しい。
とにかく自分が何をやりたいのか、さっぱり見当が付かないのだ。
だが、そんな悩みが頭の中をゆっくりと巡る中、
夏休みを目前にした友人の独り言みたいな言葉に、彼は引っ掛かった。
こんなに長くて何でもできる夏休みは、人生で実質あと二回。
だから、その時にしか出来ないって事をやらないと、将来的に後悔する。
正直、これを聞いた時は、漠然と「後悔」という言葉だけが耳に残っていた。
だが、試験が終わろうが、夏休みに入ろうが、
それ以来、なぜか彼の心の何かが友人の言葉に引っ掛かり続ける。
そしてそんな時に偶然出会った、ひと夏のボランティア体験という話。
自分以外の誰かのために、か――。
自分の探し物のために、自分以外の役に立つ。
少しだけ、回り道ではないかとも思った。
だが、それまで行き先を見失ってオロオロしていた彼の心が、
この出会いで、一つの方向を見定めた気がした。
だから彼は、それに飛びつくことにした。
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