1 ボランティアたち

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そして、そのボランティア体験に対して彼が出した条件は、二つ。 一つは、実家以外で暮らした経験のない彼自身に、 ボランティアという枠だけではなく 生活面も含めた全く新しい人間関係の中に身を置かせること。 これは、自分へのコミュニケーション能力と 新しい社会への適合性テストのつもり。 まぁ、はっきり言えば、約半年後に始まる就職活動で 多くの同級生たち同様にサラリーマンを目指すのかを決める きっかけの一つとなればと考えた。 そのために、わざわざ実家を含めた彼の知るあらゆる環境から 離れた場所と単独での参加を選んだ。 そしてもう一つは、まったく未体験な事を経験すること。 これは、そもそも彼が抱えている悩みの原因の一つが、 自分の世間が狭すぎるという現実に気付いたから。 だから、一つでも自分の知らない世界の実体験を積みたいと考えたのだ。
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