1 ボランティアたち

9/21
前へ
/37ページ
次へ
真夏の太陽の下、音らしい音はセミの大合唱だけのように思えた。 しかし、それもそのはず。 目に出来る光景の中で、人間は彼一人だけ。 広々とした畑にすら、誰もいない。 それだけに、自分の足音が妙に高く感じられる。 すげぇ。これなら、自然学校も目指すよなぁ。 徒歩で約15分と案内された村役場までの道のりを歩きながら、 妙な納得が、爽平の頭を掠めていく。 だが同時に、コンビニにスーパーが当たり前の生活しか知らない彼には、 いったいここの人々は、どうやって暮らしているのかと不思議になってくる。 だがその疑問は、歩き始めて五分余りで解消された。 畑を両脇に従えたように伸びる道をしばらく歩き、 ポツリ、ポツリとある民家を通りすぎた辺りまで来ると 向こうの方に、まばらに群生した建物が見えてきた。 あっ、ちょっと街っぽい。 駅前の衝撃の光景のせいか、そんな事が彼の頭に浮かんでくる。 そして爽平は、徐々に視界の中で近づいてくるそれらの建物を のんびりと数えてみた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加