プロローグ

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 それって、わたしの妄想と似たり寄ったりなんだよね~。  (あ~、偉い人も考えることは同じなんだぁ~)と、半分、眠ったような半分、覚醒してるようなドタマで考えるわけよ。  だってさ、(ああ、もしや本当のわたしは眠っていて、真夜中に布団の上でボ~としてる、わたしが夢だったりして)なんて、さっきから苦し紛れのメルヘンを想像してんだもの。  そういえば江戸川乱歩って推理小説家も、『うつし世はゆめ 、夜の夢こそまこと』なんて言葉を遺したらしい。  「う~む、幽玄じゃぁ~」  夏布団を腹に乗せて、天井を睨みながら、なーんで哲学的な物思いに沈んでるかといえば、飼い猫が死んじゃってから、とっても嫌な夢を見るようになったんだよね。  おかげで不眠症だよ。  で、ときどき思うんだ。もし、とんでもなく不幸なことが起きたり、人から裏切られたり、騙されたりした時、もう一度、やり直せたら、どんなにいいだろう?  その夢、ひどいの……。  どっかのアジアの片田舎なんだけど、自動小銃を片手にした小汚い作業着のオッサンが農夫たちに呼びかけているんだ。ヤシの木なんか生えてるからどっか南のほうだね。  「レディ、アンド、ジェントルマン、イッツ、ショウタイム、ルック、ミー、エブリバディ」なんて、片言の英語をガラガラな声でしゃべってんの。  ヒゲもじゃで、米軍が被るようなミリタリーキャップを被って、色は灰色に近い緑色、ほら、軍服であるような、くすんだ緑よ。  たしか作業着も同じ色なんだよね。なんども夢に出てくるから覚えちゃったよ。  その足元に両腕を紐で縛られたパンツだけの男の子がうずくまってんだよね、幼稚園くらいの小さな子でさぁ。ろくすっぽご飯も食べさせてもらえてないのか、やせ細ってあばらが浮き出てるのにおなかだけがポッコリ出てるのね。  や~な雰囲気が漂ってるわけよ。  そ、それがキモいことになっちゃう。  く~、思い出すだけで鳥肌モンだよ。吐き気がするね。  で、時間を戻したいと思うわけよ。
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