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テレビの横で携帯が光っていた。
義男の着信で一杯だった。
3時間前から履歴がある。
怒った顔をしていたのも無理もない。
エントランスのチャイムが鳴った。
モニターに両手にレジ袋を下げた義男が写っていた。
「ずいぶん、買い込んだな」
「ああ、夕飯代わりだ、余ったらお前が食え」
袋の中には、インスタント食品やビールが複数乱雑に入っていた。
「冷えているうちに飲もうぜ」
義男がビールを差し出した。
いつもの銘柄だ。
一本一気に飲み干した。
喉が欲していたのがあからさまだった。
「ここは、何年ぶりだ、3年か?」
と義男がインスタントラーメンを啜りながら言った。
「ああ、それぐらい経つだろう」
義男が来るのはあの日以来だ。
3年前、みゆきと別れる数日前だった。
今頃みゆきのことを蒸し返したくなかった。
「今日は何の用だ、落ちぶれた旧友の慰問か?」
僕は話をそらした。
義男は、背広の内ポケットから封書を取り出し、
ポンと僕の膝の上に放った。
「なんだ、これ?」
「招待状、結婚式の」
「誰の?」
「みゆき」
一瞬、息が止まった。
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