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第3章 消失
そんなある日、義男が突然訪ねて来た。
3年前のことだ。
義男は、仕事のついでだと言っていた。
僕は、気まずかった。
みゆきとの別れを決心していからだ。
その時、義男が話したことを思い出した。
義男は、二十歳の時、初めて口にしたビールを今も飲み続けていると言った。
色々浮気したが、結局、最初の奴が一番旨かったと。
そして、こうも言った。
「恋愛の最後に良い女に巡り合う、これが理想だ。
しかし、現実は逆もある。
ビールなら一周回って元に戻れるが、女はそうはいかない」
「最良と別れて、最悪と結ばれる。最悪だな!!」
義男の云わんとしていることは、よく判っていた。
巡り合った最良の人を、移り気で失う事もある、と言いたかったのだろう。
人が成長しないなら義男の言う通りである。
だが、人は成長する。
それ故、出会いと別れは必然的格差のバランスによるものだ。
地元に残った義男は昔のままだろうが、
僕は、違うステージに上っている。
そう思っていた。
それから数日後、みゆきは僕の元を去った。
僕は、内心ホッとしていた。
別れを切り出すのに苦慮していたからだ。
結婚するにはまだ若い。
一抹の寂しさも感じたが、他の女性と出会える、
その期待の方が大きかった。
みゆきの事を尋ねられたら
『振られるより振る方が辛い』
と嘯いた。
あるクライアントが
「家族が世話になった」と、みゆきを懐かしがっても
意に介さなかった。
周りは僕を訝しげに見ていた。
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