第3章 消失

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みゆきと別れてすぐに同僚と恋仲になった。 彼女は、容姿、学歴共に素晴らしかった。 僕の優越感は、満たされた。 しかし、しばらくすると諍いが絶えなくなった。 激しい口論と罵り合いの日々の末、別れた。 他の女性とも同じことを繰り返した。 「みゆきさんじゃないのよ」 彼女らに意外な言葉を浴びせられた。 僕が、彼女らにみゆきを強いていたと言うのか? 彼女らの不平不満は、みゆきが黙って耐えていたことなのか? 頻繁にみゆきを思い出した。 会いたいと懇願する心を抑えた。 心に塞ぎようもない大きな穴が開いてしまっていた。 虚しさが心を支配した。 クライアントの信頼を失い、焦りばかりが募った。 簡単なミスを繰り返し、仕事を熟せず、評価が下がった。 虚栄心が人生の意義を唱えた。 自分を正当化し、社内の冷たい視線へ対抗した。 そして、何度かの左遷の末、解雇された。 無職になり、就職する気もなく、貯金は底をついた。 この高いマンションは、来週までに出て行かねばならない。
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