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第4章 幸せな結婚式
朝、携帯に叩き起こされた。
なかなか眠れず、朝方に成ってやっと眠りに着いていたところだった。
義男はもうエントランスにいた。
背広を一着、肩に担いでいる。
「ねむそうだな」
「ああ、」
「電車で寝ればいい」
義男は有無を言わせず、
僕を持って来た背広に着替えさせた。
一晩考え、祝福することにした。
それがみゆきへの償いだと思い始めていた。
心の隅にみゆきに会える嬉しさもあった。
僕は、矛盾していた。
「晒し者かな?」
「そうかもな」
僕のネクタイを結びながら義男は言った。
義男は昔から兄の様に振る舞う。
「まぁ、いい、身から出た錆だ、相手の男は?」
と義男に訊いた。
「みゆきの同僚だ」
「僕の事は?」
「知っている、俺らと同い年の隣町の男だ、
此処じゃどうか知らんが、みゆきは田舎じゃ評判の美人だ、
ガキの頃から人気があった、お前との仲はみんなが知っている」
「その男は、なんとも思わないのか?」
「心配するな、お前が来ることは、俺とみゆきだけの秘密だ」
「もしばれたら、結婚は台無しだぞ、なぜ、みゆきはこんなことをする」
「何度も聞くな、俺は知らん、それがみゆきの希望だ。
それに、お前が捨てなければあの男はみゆきに巡り合えなかった、
捨てたお前に感謝しているよ、たぶん」
「何処かの馬鹿息子がポルシェを擦った、御蔭で貧乏人でも念願が叶う・・・」
「傷物にしたというのか・・・」
「違う、喩が悪かった、が、それが男女の縁だ」
「駅からは、愛車で送ってやるよ」
「行くぞ」
義男は僕の肩をポンと叩き、歩けと促した。
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