君か僕のいない夏

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その人と書いた内容とそっくりそのまま。僕の視点から書き直して。 書き終わってから、ひどく泣きたくなった。なんてみじめなことだろう。10年たっても、まるで割り切れるようにならず、得体のしれない相手に縋りつく。それでも、縋らずにはいられない。そのみっともなさで、じくじくと胸が痛んだ。けれども胸は高揚感も覚えている。二度と会えないはずの親友と、再び言葉を交わせるかもしれないという淡い期待。 日常と非日常は紙一重だと、10年前の僕は知った。 だから今の日常も、一瞬で非日常に変わる可能性がある。ありえないはずのことが、ありえるかもしれなくなる。ダメ元でも、手を伸ばさずにはいられない。 僕は褪せたノートを引き出しに突っ込んで、逃げるように下山した。
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