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レミジオがカナに話しかけている様子を、クリスは馬車の中から窺っていた。
カナの表情が段々と曇っていくのが分かった。
何か変な話をしていないだろうか?
レミジオが館に行く道中に、『カナデ様に確認しておきたいことがございますので、帰る前に話をさせてください』と珍しく申し出たのだ。
レミジオは、出自が不明な者だが、アントニウスが執事としての腕を買い、クリストファー付きの執事としてあてがった。
何かを見透かしたかのような瞳を向けられる時がある。
黒色に、藍色が差し込んだ瞳。
どこかで、昔、見据えられた覚えがある。
だが、瞳は同じでも、外見は全く違っていた。
――あの“魔法使い”を思い出させる――
蛇が蛙に睨まれ、身が竦む思いになる。
あいつのあの瞳に鋭く見られるのは、耐え難い。
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