タロット占い

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「ねぇねぇ、Aランチ美味しい?」 そう聞く北本先輩はBランチだ。 「はぁ、まぁ」 適当に返す。 急いで食べてるんだから話しかけてくるな。 しかも、体をこっちに向けるの止めてください。 「ね、少しハンバーグちょうだい」 「嫌です」 可愛く言ってもあげません。 私達そう言う間柄じゃないし。 初めて会った人に、どうして分けなきゃいけないの。 「即答されてんの」 アハハと笑う渋沢先輩。 「うっせぇよ」 拗ねた顔をしてもイケメンはかっこいいらしい。 ちらりと見たら目が合った。 慌てて目を逸らしたのに、また話しかけてきた。 「占いババさんはなんて名前?」 「・・・・・」 まったく名乗りたくない。 「ねぇねぇ、良いじゃん。俺は北本倫太郎、倫って呼んでよ」 「・・・嫌です」 呼びたくないし、名前も教えたくない。 突き刺さる周囲の視線を、この人は感じないんだろうか。 悪意のある視線にゾッとするんだけど。 イケメンには関わりたくない。 大翔の時で懲りたんだよね。 「君は、紀伊ちゃんでしょ? 磯野紀伊ちゃんだよね」 渋沢先輩が、紀伊ちゃんにそう言ってにっこり笑う。 「勝手に名前を覚えないで」 紀伊ちゃんはクールにバッサリ切った。 「噂通りクールビューティー。あ、知ってると思うけど俺は渋谷慧ね。慧って呼んでよ」 「・・・ウザい」 「まぁまぁ、そう言わずに」 渋谷先輩、めげないなぁ。 もちろん、隣の北本先輩もだけど。 イケメンて自分に自信あるからこんなのなのかな? 「占いババさん、名前教えてよ」 しつこいです、北本先輩。 「ババ、ババってさっきから煩いのよ」 あ、紀伊ちゃんが切れた。 「良いよ、紀伊ちゃん」 そんな怒んないでよ。 「だって、千尋。こんな可愛い千尋を捕まえてババとか、ムカつくんだもの」 「へぇ、千尋ちゃんて言うんだね。可愛いね」 イケメンスマイルを私に向けた北本先輩に、紀伊ちゃんがしまったぁ~て顔して落ち込んだ。 うん、良いよ、紀伊ちゃん。 名前なんてそのうちバレるし。 「ごめん、千尋」 「ううん、大丈夫」 落ち込む紀伊ちゃんに微笑んだ。 「千尋ちゃん、笑ったら可愛い」 横顔を見てた北本先輩がそう言ったので、 「チッ・・・」 思わず舌打ち出ちゃったよ。
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