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「千尋、もう食べた?」
「うん」
「じゃあ、いきましょ」
食べ終えた食器の載ったトレーを持って立ち上がった紀伊ちゃんに習って、私も鞄を肩にかけてトレーを持って立ち上がる。
「えぇー! もう行っちゃうの?」
にやけ顔の渋谷先輩を無視して歩き出す。
「またね?」
手をヒラヒラさせながら微笑んだ北本先輩に、黙礼だけした。
そこは、一応ね。
また、なんてないけど。
ざわつく店内を歩いて、食器の返却口へと向かった。
刺さる様な視線は全部女子からで。
本当、面倒くさいな。
彼らのお陰で悪目立ちしちゃったよ。
「いい迷惑ね」
紀伊ちゃんがぽつりと漏らした言葉に、無言で頷いた。
校内で有名な二人と一緒に食事なんて、味も分からなかったよ。
紀伊ちゃんとの、平和な時間を返してほしいわ。
「それじゃあ、また家でね。バイトの帰り気を付けて帰るのよ」
「うん。紀伊ちゃんもバイト頑張って」
校門で手を振って別れる。
お互いのバイト先は反対方向。
紀伊ちゃんのバイト先はマンションに近いけど、私が今日向かう家庭教師のお家は、電車に乗っていかないと行けないから、私は駅へと向かう。
本当、今日は散々だったな。
太陽の眩しさに目をしかめて、溜め息をつく。
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