花占い

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「「「キャー!」」」 女の子達の様々な悲鳴が周囲にこだました。 ふんわりと私を包むのは、倫太郎君の香水の香り。 慣れていたはずのそれに、ドキドキしてしまった。 両手で私をギュッと抱き締める倫太郎君が微かに震えていたのを知ってるのは、きっと私だけ。 今の倫太郎君なら、信じられる。 「千尋を、泣かせるような事をしたら承知しないから」 紀伊ちゃんは立ち上がって倫太郎君を睨み付ける。 「分かってるよ。千尋ちゃんを泣かせない。別の意味では啼かせるかもしれないけどね」 いつもの口調に戻った倫太郎君。 別の意味で、泣かされるのはちょっと困るかなぁ。 でも・・・別ってなんだろう? 「はぁ? 結婚するまで清い関係でいなさいよ」 紀伊ちゃんが真剣に怒ってる。 「さぁね。もう千尋ちゃんは俺のものだからね。紀伊ちゃんの口出しはいらないよ」 「千尋、ダメ。やっぱりこんな手の早い男はダメよ」 紀伊ちゃんが焦ったように私に手を伸ばす。 「おっと、千尋ちゃんは貰ってくよ」 倫太郎君は、私を抱き抱えたまま紀伊ちゃんから距離を取ると、私の手を引いて走り出した。 「へっ? ど、どこ行くんですか」 「二人になれるところだよ」 倫太郎君は嬉しそうに笑うと私にウインクして、走るスピードを上げた。 足がもつれそうに、なりながらも倫太郎君についていく。 倫太郎君と繋いだ手は温かくて、胸の奥がじんじんしてた。 この先に何かが待ち受けていても、きっと私は大丈夫。 倫太郎君の手から伝わってくる愛情を信じられたから。 「千尋ちゃん、大好きだからね」 倫太郎君が蕩けそうな微笑みを浮かべる。 「信じますよ、その言葉」 「もちろん、ずっと、ず~っと信じてて」 倫太郎君がどさくさに紛れて私の額にキスをした。 「なっ、なにを」 ポッと赤くなった頬。 今日の占いは、珍しく当たってた。 激甘彼氏が出来るって言う占い結果に、ちょっとだけ・・・ううん、かなり満足できた。 私の占いもたまには当たるんだね。 たぶん、微笑み合いながら校内を走る私達は、学生達の注目の的だっただろう。 この噂は、瞬く間に流れるんだろうな。 ちょっと、面倒くさいと考えていた私の背後で、紀伊ちゃんの「待ちなさいよ~!」と叫ぶ声がこだましていた。                       おしまい
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