第2章

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「悠木さんの彼女ってどんな人ですか?」 「どんなって……別に普通」  苦手な話題に語尾が尻すぼみになっていく。 「つーか、俺の彼女がどんなのか知ったって別に面白くねえだろ」  不機嫌に返すと、逆に笑顔で反論された。 「いいえ? ものすごく興味あります」 「物好きな奴……」  溜息を吐いて言い捨てる。すると瀬名は「お言葉ですが」と前置きをしてから続けた。 「悠木さんがこれだけ仕事の鬼で、彼女を数ヶ月放置する実情を知ってるだけに、相手はどれだけ寛容な人なんだろうなー、と気になってしまうのは当然だと思いませんか?」  嫌味だと思いつつも、事実なだけに何も言い返せない。 「……同い年。大学ン時の同級生。銀行で働いてる。交際歴三年半。血液型A型。Cカップ」  やけくそになり、知ったところでなんの得にもならない情報を無表情で垂れ流す。 「仕事の事は理解してくれてるみてえだから、会わなくても文句は言われない。……以上」  これでどうだと言わんばかりに瀬名を見た。 「じゃあ悠木さんはどうなんですか?」 「へ?」 「仕事なんてほっぽって、彼女とデートしてたいなあ。なんて思いません?」 「別に」 「本当にワーカーホリックですよね」  瀬名は呆れた風に呟く。 「でも、今日の花火大会。俺以外の誰と行ったのかなー……とかは考えないんですか?」  瀬名が意味深な視線を寄越す。 「別に、……つーか友達とつってたから」 「男でも一応『友達』って言えますけどね」  意地の悪い笑みを浮かべた瀬名を、思い切り睨んだ。 「喧嘩売ってんのかよ?」 「売ってません」  瀬名は両手を上げて見せる。 「ただ、俺だったらそう思っちゃうかなって思っただけです」 「……意外に嫉妬深いんだな」 「一般的だと思いますよ。悠木さんが淡白過ぎるんです」  断言されてムッときた。 「俺の事よりお前だよ、お前!」 「え? 俺がなんですか?」 「彼女できてねえのかよ?」 「はい。できていません」  以前と変わらない返答に、俺は聞こえよがしに舌打ちした。
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