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「悠木さんの彼女ってどんな人ですか?」
「どんなって……別に普通」
苦手な話題に語尾が尻すぼみになっていく。
「つーか、俺の彼女がどんなのか知ったって別に面白くねえだろ」
不機嫌に返すと、逆に笑顔で反論された。
「いいえ? ものすごく興味あります」
「物好きな奴……」
溜息を吐いて言い捨てる。すると瀬名は「お言葉ですが」と前置きをしてから続けた。
「悠木さんがこれだけ仕事の鬼で、彼女を数ヶ月放置する実情を知ってるだけに、相手はどれだけ寛容な人なんだろうなー、と気になってしまうのは当然だと思いませんか?」
嫌味だと思いつつも、事実なだけに何も言い返せない。
「……同い年。大学ン時の同級生。銀行で働いてる。交際歴三年半。血液型A型。Cカップ」
やけくそになり、知ったところでなんの得にもならない情報を無表情で垂れ流す。
「仕事の事は理解してくれてるみてえだから、会わなくても文句は言われない。……以上」
これでどうだと言わんばかりに瀬名を見た。
「じゃあ悠木さんはどうなんですか?」
「へ?」
「仕事なんてほっぽって、彼女とデートしてたいなあ。なんて思いません?」
「別に」
「本当にワーカーホリックですよね」
瀬名は呆れた風に呟く。
「でも、今日の花火大会。俺以外の誰と行ったのかなー……とかは考えないんですか?」
瀬名が意味深な視線を寄越す。
「別に、……つーか友達とつってたから」
「男でも一応『友達』って言えますけどね」
意地の悪い笑みを浮かべた瀬名を、思い切り睨んだ。
「喧嘩売ってんのかよ?」
「売ってません」
瀬名は両手を上げて見せる。
「ただ、俺だったらそう思っちゃうかなって思っただけです」
「……意外に嫉妬深いんだな」
「一般的だと思いますよ。悠木さんが淡白過ぎるんです」
断言されてムッときた。
「俺の事よりお前だよ、お前!」
「え? 俺がなんですか?」
「彼女できてねえのかよ?」
「はい。できていません」
以前と変わらない返答に、俺は聞こえよがしに舌打ちした。
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